カズシン・ブログ

カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。

不動産で大事なこと。スルガ銀行の不正融資の問題、物件の価値と価格、自己資金。

2021.11.09

私は25年ほど、不動産業界で仕事をしています。

その経験から、『不動産』を買ったり売ったりする場合、大事なことがあると思っています。

 

会社員の方(サラリーマンの方々)やお医者様など個人の不動産投資に対して、中心となり融資したスルガ銀行。シェアハウス『かぼちゃの馬車』の問題は皆さんご存知なのではないでしょうか。不動産業者へ購入者の預金額の改ざんを指示したらしい一部の行員もいたことが世間に知られ、購入した方々は被害者と見なされるようになりました。

一棟アパート・マンションでも、サラリーマンの方々の預金額の改ざん等不正が行われていたそうです。

 

女性専用シェアハウス『かぼちゃの馬車』を購入した方たちがスルガ銀行による不正(預金額や年収等の改ざん)の事実を追求し勝ち取った「借金の帳消し」(「代物弁済」)。奇跡的な成功、戦いの勝利がありました。

一棟アパート・マンションを購入したサラリーマンの方々からも、同様の解決を求める声があがっています。

 

「投資は自己責任」と言われるものの、不正が見つかったことから、不正を行った不動産業者やスルガ銀行の責任が問われています。

不動産の価格は、売主が自由に付けることができ、買主はその値段でいいから購入するわけです。採算が合わない物件を購入してしまったとしても、それは投資の失敗であり、自己責任となります。損失をカバーしてくれる銀行も不動産業者もいないのが通常です。

スルガ銀行が融資したシェアハウスや一棟アパート・マンションなどについては、行員による不正があったこと、改ざんがあった通帳の原本確認をしていなかったことなどを含めて銀行側のミスが取り沙汰されています。通常ではない融資と見られるため、投資した人がその責任を負うべきものではないという論調が感じられます。返済に苦労している債務者(サラリーマンの方たち)は被害者であり、加害者は、資料の改ざん等不正を行い、素人(サラリーマンの方たち)に高い金利で融資して儲けただろう銀行と不動産を売った業者という構図が一般化されたように思われます。

詰まるところ、グルになって素人を騙して、良くない物件を買わせた銀行と業者が悪い、といったところが主張になるのでしょうか。買ったサラリーマンの方たちは不正には関与していない(知らなかった)ので、救済されるべきであるということでしょうか。

 

いずれにせよ、不動産投資に失敗して返済が厳しいサラリーマンの方々は、かなりの人数になっているのでしょう。スルガ銀行が中心となって、サラリーマンの方々への融資を行いましたが、スルガ銀行以外から借り入れた方もおられるでしょう。

こうなる(投資が失敗する)ことが最初にわかっていれば、決して買わなかったはずの不動産を買ってしまった方々が大勢おられる現実があります。

 

そこで、どうすれば、不動産投資の失敗を避けられるのか、騙されたのではないかと後悔するような物件を買わないでいられるのか、私の考えは以下の通りです。

 

不動産投資そのものをしなければ、不動産投資の失敗は起こらないわけですから、それも一つの選択肢です。不動産投資がいいかわるいか、投資をするかしないかはご本人が決めることなので、不動産投資をする場合は、という前提で書きます。投資をすすめるつもりはありません。「投資は自己責任」原則であるこの言葉は、不動産投資を行うのであれば軽いものではないでしょう。しかし、命が重いことは間違いありません。

 

不動産を買って後悔する結末を避けたいのであれば、お人好しを止め、無知を止めることが必要です。欲は誰の心にもあるもの(欲のあまりない人も、欲のとても深い人もいますが)ですから、欲を抑えようと思っても簡単にはいきません。

欲をコントロールすることより、お人好しを直したり、無知を止めることの方がやり易いのではないでしょうか。

どのような仕事、どのような商売でも、実際にやっている人とやったことがない人では全く違います。知らない業界、経験のないことでは、やったことがない人は失敗するのは当たり前かもしれません。失敗する可能性が高いところに、人間には欲もあるわけですから、欲が膨らめば、失敗がほぼ決まってくるものではないでしょうか。

 

自己資金を入れず銀行からの借り入れで、不動産(物件)を買って、元利返済しつつ十分手残りがあり、持ち続けていずれ自分の物(資産)になる、そういうことは容易く起こらないのではないかと思います。売却するのであれば市場が高い時に売れば、損はしない場合はあるとして、持ち続けるのは難しい場合があると思います。

仮にいい物件を買えても、自己資金を入れず借入金を物件の収益だけで返し続ける、まして手残りも期待できる、修繕の費用も賄えて、そのまま持ち続ければ残債がゼロになり完全に自分の物にできるというケースは、私はおおむね無いと思います。ただし、そういう例があるとして、それには理由があり、自分のケースは当てはまらないものと考えておいた方がいいのではないでしょうか。

いろいろな物件があるので、一概には言えませんが、土地はすでに自分が持っていて建物の建築費用の分だけ融資を受ける、そうした古くからのやり方や、それに近いやり方、自己資金を半分くらい入れて一棟収益物件を買うような堅いやり方、それらが不動産投資のやはり王道ではないかという気がするのです。

フルローン、オーバーローンという甘い言葉が出回る中、スルガ銀行から融資を受けて失敗した方たちがたくさんいる現実があるわけですから、理解できるところではないでしょうか。物件を高値掴みさせられたということのようですが、物件の価値をわかることは大切です。物件の価値がわからないで不動産を買うことは、失敗が決まっているようなものです。したがって、仮にスルガ銀行や不動産業者の不正がなくても、投資の成功(失敗しないこと)は難しかったのではないかと、そういう気がするのです。元来、不動産投資は難しいものだと思います。

スルガ銀行が融資した物件に関しては、レントロールの改ざんもあったそうですから、鵜呑みにして投資した方もおられたのでしょうか。

路線価を見ても実際の市場はまた異なりますので、相場をわかるには経験が必要です。相場は大抵高いものです。とくにいい物件においては、安く売る理由がありません。高くても買っていい物件であれば、後から不満も出なかったのでしょうが、価値が低い物件を高く買わされたと思うと怒りもそれだけ強まるのでしょう。

価値に応じた価格で買わなければ、採算はとれないでしょう。採算が合う物件を見つけるのは、割と難しいです。自己資金をある程度入れておけば、仮に、採算が合いづらい物件であっても致命的な失敗は避けられる場合があります。不動産投資で大きく失敗するのは、物件の高値掴みが理由であることもあれば、自己資金を入れていないことが理由であることもあります。自己資金を入れておけば、スムーズに回るケースもあると言えそうです。

自己資金を入れず物件を買う(買える)ことを得な話であると考えるのか、無理が生じる損(危険)な話であると考えるのか。保有期間や物件の種類等にもよると思いますが、大事なところではないかと思います。

 

皆さんは、どのように思われますか。

 

カズシン株式会社

代表取締役 山内和美