カズシン・ブログ

カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。

このような事態に陥ったのは。『スルガ銀行』が先か?or 『スマートデイズ「かぼちゃの馬車」』が先か?

2018.06.01

スルガ銀行は、今回のスマートデイズ(旧スマートライフ「かぼちゃの馬車」ほか)の破綻の前から、個人(会社員の方々ほか)に対して、他行と比べるとかなり積極的に不動産投資(事業・経営)に関する融資をしていました。また、行員が書類の改ざん(自己資金額等)を知っていたことを認めていることなどから、『スルガ銀行』がなければ、そもそも今回のような事態は起こらなかったという想像をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「『スルガ銀行』が先」とする考え方です。

一方、たしかにスルガ銀行がなければスマートデイズ(旧スマートライフ)による今回の件は、組み立てができなかった(実行できなかった)かもしれないですが、スマートデイズ(旧スマートライフ)が考えつかなければ、実行しなければ、今回の件は起こらなかったという想像をされる方もいらっしゃると思われます。

「スマートデイズ(旧スマートライフ)が先」とする考え方です。

私自身は、後者【「スマートデイズ(旧スマートライフ)が先】とする考え方に立っております。

スマートデイズ(旧スマートライフ)設立の以前から、スルガ銀行は、会社員の方々個人に向けて、他行とは異なる路線で、積極的に融資をしてきたという経緯を見れば、「『先に仕掛けた?』のはスルガ銀行であるかのような見方」になってしまう可能性を思われる方も出てくるのかもしれません。真偽については、私には、今はわかりません。ただし、今回そこに「スマートデイズ(旧スマートライフ)」が出てこなければ、仮に、たとえば「スマートデイズ(旧スマートライフ」から声がかからなければ、「かぼちゃの馬車」の案件が目の前に現れてこなければ、スルガ銀行は、今回のように、ここまで大がかりとなり、自らも大変な事態に陥る流れにはならなかったのではないかという気がしています。

そういう意味で、『「スマートデイズ(旧スマートライフ)」が先』ではないかという見方に立っております。

スルガ銀行は、スマートデイズ(旧スマートライフ)に出会うまでも、同様に審査が緩めであり、サラリーマンの方々に対して億の単位で投資用不動産購入の融資を実行していただろうことを考えると、遅かれ早かれ、程度の差はあるにせよ、もしかしたら、多少なりとも社会的な問題となる事態は避けられなかったのかもしれません。しかし、今回の「スマートデイズ(旧スマートライフ)」の破綻がなければ、現在進行中であると思われる、「スルガ銀行」ここまで極度に異例かつ厳しい現実へ直面する事態は起こらなかった可能性が高いような気がしております。

それほど、「スマートデイズ」(旧スマートライフ)は、今回の「スルガ銀行」の事態に対して、大きな影響力を持ったということを感じております。

貸し出し金額の面からだけでは「スルガ銀行」の存続を危惧する声があがるところまでには至らなかったのでしょうが、行員による書類改ざんの黙認など、銀行内に根付く問題があまりに大きいことが周知されたために、十分に審査せずに融資された他の物件などへの波及(心配)もあり、本体からぐらぐらしてきた感じです。

銀行の存続が危ぶまれるほどの事態につながった、「スマートデイズ」(旧スマートライフ)によるシェアハウス事業。

このシェアハウス事業を見れば、シェアハウス事業そのものが難しいということにプラスして、スマートデイズ(旧スマートライフ)の利益、販売会社等の利益、建築会社等の利益、コンサルタントのフィー、小さくはないだろうキックバックなど、1つのシェアハウスが稼働するまでに、たくさんの利益が。そして、オーナー様に引渡された時点では、その物件ではもはや利益がとれないことの恐れが現実となった。

その程度が他の物件での話と比べて、いくらか大きかったようであり、今回スマートデイズ(旧スマートライフ)の物件(シェアハウス「かぼちゃの馬車」)を購入されたオーナー様の多くが、この影響を受けて、立ちいかなくて苦しまれることになっているということ。

どのような物件でも、物が動く時には経費はかかります(建築会社はもちろん利益がとれなくては仕事にならず、仲介手数料なども適正に支払われなくては、たとえ良心的であってもタダで受託する業者等もいないでしょう)。だからこそ、物件購入者の手元に残る物件は、しっかり採算が計算されたものでなくては、事業はうまくいかないことが多そうだ、ということになります。

かと言って採算ばかり計算してみても、それで実際に採算が取れるのか、果たして計算入れて現実的に採算上買える物件がこの世間に有るのかどうなのか、など、また別の議論も必要な面はありますが、まずは、冷静になることが必要でしょう。

いくつものところが利益をとっていき、最終的にオーナー様に引渡された物件は、すでに利益が出ないものになっていた。今回のスマートデイズ(旧スマートライフ)の件は、そのようなイメージになりそうです。

しかし、業者さんたちが利益をとることは当たり前であり、その利益の取り方が今回は荒かったということなのか、多額に思われたということなのか。詳細の数字はわかりませんので、何とも言えませんが、仮に自分で土地を探し、契約をし、自分で設計・建築し、自分で登記も入れて、完成したら自分で運営するというようなことでない以上、都度都度、物件にはさまざまな分野で労をとった方々や資格者に妥当・適正なフィーが支払われることは通常のことであり、支払われなければ受注する人もおりません。

妥当・適正でなかったことが今回の件での問題になっておりますので、通常の範囲を超えていたということなのでしょう。

妥当な範囲、適正な範囲というのは、業者や資格者など、その分野で業をおこなっておれば、その分野のことであればおおむねよくわかりますが、その分野以外の方だとよくわからないところだと思われます。

したがって、業者の利益の取り方の多い少ないなども、その業者さんの欲深さだけではなく、ご本人の能力や、その案件の難易度などによって変わってくることも(良し悪しは別として)ありえます。大切なのは、その業者さんなどが、ほんとうにしっかりと誠心誠意、顧客のためになる仕事をコンプライアンスも守りながら、成しえたか否かというところに集約されてくるのではないかと思います。

いい仕事をするためには、利益が得られることも必要です。

利益が載っているから「悪い」とは一概に言えず、世の中には、「安かろう悪かろう」ということもよくあります。

今回のスマートデイズ(旧スマートライフ)「かぼちゃの馬車」の問題は、一つの言い方としましては、「高かろう悪かろう」であったということになるのでしょうか。

そして、なぜ、高くなったのか?ということに関しては、いい土地やいい物を作ろうというよりも、「規格」に合った土地で規格通りの建物を、業者さんたちも通常より多めの利益をとりながら、最終的な購入者へ引き渡した。このことで、今回のスマートデイズ(旧スマートライフ)「かぼちゃの馬車」等を購入したオーナー様たちは、結果的に苦労することになってしまったのでしょう。

 

「『スマートデイズ(旧スマートライフ)』が一括借上保証(サブリース)するのだから、オーナー様は安心」といったキャッチフレーズで販売されたようですが、サブリースしてもらわなければ安心でない物件(今回の新築シェアハウスのような物件)は、半面、不安な物件だという考え方もなくはないです。

スマートデイズ(旧スマートライフ)ほか、販売会社等、建築会社等が自分たちの利益を多めにとっていけば、最終的な購入者であるオーナー様が利益をもはやとれなくなることは、おおむね、経験もある不動産業者であれば、それほど想像に難くないと思っております。

買っていただける、購入者であるオーナー様にも利益をとっていただくためには、それまでの過程において、関わる業者さんたちが、いずれも、通常の範囲で、適正と言える範囲で利益をとっていかなくては、買った後の採算は成り立ちづらいと言えます。

そして、土地の仕入れ一つとっても、最終的な購入者が利益を得られることをまず第一に想定しながら、となると、本来仕入れて採算にのる土地もそれほど大量には出てこないでしょうから、今回のように驚異的なスピードでシェアハウスの棟数を増やせたということは起こりづらいと考えられます。

急激に業績拡大(棟数を増やす)したということは、無理をしたということにつながります。

その「無理」こそが正常なビジネスとしての欠陥であったにも関わらず、最終的な購入者であるオーナー様が置き去りにされた形で、スマートデイズ(旧スマートライフ)や、販売会社等、建築会社等がいずれも自社の利益に強く拘り、結果的に通常より多少なりとも多めにとることになった。利益の陣地取りに負けまいとして、良心や誠実さではなく、ある意味、目先の利益に走った、とも言えるのでしょうか。

もともとは、その「無理」については、スルガ銀行としては当初はそれほど厳密に織り込み済みといったことではなく、側面として業績拡大(棟数の増加)の方に目を向けていたため、今回のスマートデイズ(旧スマートライフ)のシェアハウス「かぼちゃの馬車」への融資が大変魅力的に感じられた。これほどスマートデイズ(旧スマートライフ)が引き込こす「無理」(急激な業績拡大・シェアハウス棟数の増加)の旋風に、否応なく、巻き込まれていくことは(自ら積極的に融資したとしても)、当初は心底からは想定できていなかったのではないかと思います。

あるいは「無理を承知で」それでも、「業績拡大(棟数の増加)」の魅力にのめり込んで、高く評価しすぎたのかもしれません。

 

「無理」なものですから、遅かれ早かれ破綻します。

今回「スマートデイズ」(旧スマートライフ)が破綻したことで、その車(船)に乗っていた、スルガ銀行は過去の融資の問題(会社員等への不動産融資での書類の改ざんを黙認)も含めて、今回のシェアハウスへの融資の問題が大きく取り上げられ、明るみに出ることとなった。

当然、「無理」を承知で、利益を得た業者さんたちも、悪質な場合は、責任を追及されることになりました。

「無理」を承知で「一儲け」といったやり方は、不動産業界では時には起こりうることだと思います。

「無理」というのは、いずれ破綻(はじける)するものですが、破綻するまでは、カオス的であり、大きな何かを吸収し、抱え込むような、逆説的でありますが、安定的な何か、そうした魔力を持っているものではないかと思います。

最初は、しっかり立っていられる(自分たちの方で、その魔力をコントロールできる)と思っていても、加速度的な「無理」の膨張の中で、次第にその「無理」にすっぽり飲み込まれてしまった。このようにして、「スルガ銀行」は足元から危うくなってしまったのではないかという気がします。

不動産が持つ魔力は、銀行さえも危うくするものなのだと思います。

 

カズシン株式会社

代表取締役 山内和美