カズシン・ブログ

カズシン株式会社 代表取締役 山内和美のブログ
不動産業界20年を超えて、この経験に基づく…取引のこと、物件のこと、人間のこと。
宅地建物取引業者(不動産業者)カズシンの代表 山内和美が思うこと。

表と水面下。物件の価格。現実、現場、そして未来。不動産業とは。

2021.09.09

このところで不動産の市況は、表に出ているのと水面下などで実情が異なっていると思います。ネットに掲載されている売り物件などを見ると、ずいぶん高値で出ている印象があります。しかし、物件の価値に比べて価格が強いと感じるそうした物件は動きづらくて、取引に関しては、一部の物件の種類やエリアは別としても、威勢がいい時期ではないというのが実感です。

私は東京に宅建業の事務所があり、自宅も東京です。東京に関して感じるところ、そして、私がそう思うという限りの話として。

たとえば、非常に良い立地にあるものの不良債権のようになったホテルを購入された話があります。価格は特別手頃とは言えないものの、コロナ禍のこういう時期でなければまず売りに出なかったと思われるような、立地が魅力のビジネスホテル。レジャーホテル経営・運営の法人が取得し、大掛かりな工事をして再建する計画です。

おおむね、こうした情報は、出回る前に買い手が決まり終了します。

今年になってとくに、任意売却で物件が動いているように思われます。一部表に出ているケースもありますが、大型物件などは水面下で交渉があり、少し情報が回った時には、すでに契約済というのが実情に思われます。価格が安いということはないですが、指値がきく場合があります。また、場所のいい物は、高くても売れるということもありますので、なかなか出てこない物件などは、安くなくてもこの機会に購入するという考えを持っているところもあります。

ただし、そうは言っても、やはり大型になると買えるところは限られており買うにも価格にもシビアですから、水面下で決まる物ばかりではないです。不動産業者が物件を買いテナントの立ち退きを完了し、市場に売りに出るものなどは、多少広く買主を探さないと希望価格で手が挙がらない傾向もあります。

また、価格帯もあるところを超えると、限られた話になるのですが、そのうえ価格が強すぎると買いたくても資金の調達にも無理が生じて、物件が動かないということもあります。お話だけなら入るものの、現実に買えるところまで道のりが遠くて、試行錯誤が続くという印象です。

大型物件と言っても、私が取り扱う限度までの価格帯での話です。

実感がわかない価格帯、東京には、私が取り扱うことは今後もないだろうと思うようなすごい価格帯の物件があります。そうした物件は、不動産というよりも金融についての話が必要になるのかもしれません。

 

コロナウィルス感染症。様々な業種や法人、個人に影響がありましたが、たとえば、影響を受けたパチンコ店が「売ってほしい」の話に応じるケースも出ています。コロナだけが理由ではないにしても、他の業種も非常に厳しくなっているところがあり、ウィズコロナ・ポストコロナで街の風景、あるいは表には見えないけどオーナーチェンジもあり、いろいろ変化があることでしょう。

にぎわっていた通りでも空きテナントが目立ち、窓に大きく貼られた「募集」の張り紙が痛々しいです。傷が癒えるには時間がかかることでしょう。

 

最近、売りやすい(需要がある)と思うのは、「土地」です。土地にも大きい小さいありますが、大きくても小さくても、立地によりますが土地は、動くと思います。

中古の区分マンションは売出価格が高くなり、引き続き高い感じで推移しています。中古区分マンションは物件にもよりますが、実需と投資の両方から検討されます。新築マンションが高いため、中古も高くなっている面もあると思いますが、マンションは検討しやすく買いやすいところがあり、コロナ禍においてもその特徴もあって売れ行きがいいのではないかという気がします。

投資で買うにも持つにも一棟物件に比べるとハードルが低いため、今後も大きく値を下げることはなく、流通していくように思います。ウィズコロナ・ポストコロナで大幅な値崩れは起こらないと考えますが、海外の投資家も国内の投資家も、区分マンションの投資に慣れてきているでしょうから、立地や物件の価値は細かく見られるようになるのではないでしょうか。

不動産について言えば、大きく分けると、二極化が根付くのでしょう。

東京の立地の良い物件、とくに区分マンションは投資対象として確立されるものの、半面、立地やエリアによっては、難しくなるのだろうと思います。

一棟収益物件も同様ですが、東京にもいくつものエリアがあり、場所によっては東京でも難しい物件はあります。地方でもいい立地にある物件もありますが、選ばれる物件と難しくなる物件に分かれ、選ばれる物件が価格を維持、上昇させる一方、難しくなる物件は価格の維持がしづらくなり下降していく、そういう流れになるのだろうと思います。

 

レジャーホテルの場合、コロナ禍、東京の中心に近いところのホテル街に密集しているホテルに売上減が目立ち、ロードサイド型や地方でも場所が良かったこともあるのでしょうがホテルの売上はそれほど落ちなかったと聞きます。

 

東京がいいとばかりは言えませんが、私の場合は、レジャーホテルでも、それ以外でも、それでもやはり東京の駅に近い物件に注目していきたい気持ちが強いです。

大雑把な分け方になりますが、東京の駅近物件とそれ以外の物件、というのが二極化の一つになると思います。ただし、二極化というのは、この限りではなく、概して全体に言えるのだろうと思います。

私の場合は、東京の「駅近」と「それ以外」で大きく分けてしまっていますが、人によって軸は様々でしょう。何かとそれ以外という分け方で、その「何か」が「何」になるのかが、その人が持っている価値観であるように思います。

このブログで書いていることは、私の価値観の表れです。

 

当たるも八卦当たらぬも八卦と言ってしまえば、無責任な感じがあるのかもしれませんが、東京オリンピックに向けて高揚しているまさにその時期、パンデミックに襲われオリンピック延期、混乱に突入することがあらかじめ具体的に予想できた人はまずいなかったとすれば。不動産の今後も、市況も、未来のことは想像はできても予想はしたとしても、結局、やはりそれは当たるとも当たらないとも定かとは言えない、それが人間の、少なくとも私の限界であると思う次第です。

 

コロナ禍であっても、平時であっても、どちらかと言えば、私はやはり個別の物件を見て、納得がいく物件かどうかが大事なのではないかと思います。

現在の状況で言えば、インターネットの情報をざっと見る限りにおいてですが、高い感じがします。ただし、中には今後もっと値段が上がる物件もないとは言えません。しかし、水面下ではこういう時期でなければ買えない物件や納得のいく価格で物件を買っているところもあるわけですから、ネットでも水面下でも、物件は選んだ方がよさそうです。

また、コロナ禍での物件取得のメリットは、選んだ買い方ができるという面ではないかと思います。また、今買う方は、いいと思う欲しい物件でないと買わない方も多いでしょうから、いい物件が出たら、買える方は買われるといい買い物ができるのではないでしょうか。しかし、そういう物件は他の方も買いたいと手があがるので、いろいろ条件を付けたり、価格交渉が強すぎたりすると、結局、手に入らない、となります。

コロナ禍なのだから最安値で、というような買い方は、とくに競合がいる、競合が出てくる物件では私は、おそらく無理な話だと思いますが、コロナ禍のダメージにより不本意に市場に出てきた物件を多少高いと思うくらいの価格でもこの機会に買うというような方針であれば、取得できる見込みはあると思います。ぱっと買う方、判断が早い方が物件は手に入れている感じがします。(ぱっと買えるということは、ある意味よくわかっているということでもあります。もちろん、ぱっと買うリスクはありますので、わからない物件、不安があるのであれば、じっくり考えた方が、たとえ物件は手に入らなくても、後悔しない分いいと思います。)

おおよそぱっと買う方に物件は行きますが、半面、動きづらい物件、買いづらい物件などの中には、一年とかの期間をかけて価格の交渉を続けるというケースも、もちろんあります。

 

政府は実質無利子での融資他お金をどんどん流し込んでくれましたが、それでも多くの企業は苦しんでいるのではないでしょうか。企業が持っている物件は表に出ないで売買されているケースはあるでしょう。

リーマンショックで大きく痛手を受けた企業があります。この10年間大変な思いで、諦めずに、好転に向けて努力を継続してきた企業がいよいよ気力も喪失し、ついに法人を譲渡したり、保有している資産を売却している例もあります。

個人も厳しくなっている人は大勢おられると思います。物件を手離す方もいるでしょう。一戸建てや区分マンションは、ちょうどよく売れている時期で、購入意欲を強く持っているところはたくさんあります。

個人の保有している住まい(一戸建てや区分マンション)や投資用区分マンションの任売の物件が市場に出れば、検討しようと考えている方もおられるでしょうか。表に出ないとは限りませんが、仮に表に出ても、不動産業者がすぐに購入するケースがあると思います。不動産業者は採算が合えば、すぐにぱっと買うので、不動産業者と市場において競合する場合は、判断力が求められるところでしょう。

一般の方は、おおむね、急いで買うとリスクは高くなると思います。

戸建用地やアパート用地に向いてる土地(古家付き含む)がよく売れていますが、不動産業者でも競争して買っています。時間をかけて検討していると(時間が必要だから時間をかけているのですが)、売れる物件(仕事になる物件)は買えません。短時間で手を挙げるところ、しかも条件を付けないところに物件は行きます。

1つの物件、いい物件、欲しい物件を手に入れるのは競争があり、決断が必要です。

 

買い替えしているところもあります。

長く経営していたレジャーホテル、コロナ禍の影響はあり、「売ってほしい」ときたところに売却(その後、壊してレジが建ちます)して別の場所でレジ(居住用の一棟マンション)を購入。いい物件が買えたそうです。ホテルでもいい物件があれば検討できたのですが、レジのいい情報が入り、また物件として手間もかからず、いい買い物ができたようです。

ホテルは収益があがれば魅力がありますが、レジデンス(居住用)はホテルとは違う魅力がまたあります。コロナ禍だからこそ、と思うようないい物件が取得できる機会に恵まれたのでしょう。

コロナ禍、急ぎでもなかったので先延ばしにしてきた決断を思い切って実行される方がいます。決断には多大なエネルギーが必要となりますが、エネルギーがあるうちに決断をすることが開ける未来につながるケースは少なくないような気がしています。

 

周辺の同業者との話「仲介が決まらない(なかなか決まらない。大きな物が決まらない)」「仲介が難しくなった」と言います。扱う物件の種類やエリアは同じではないですが、コロナウィルスの影響は不動産業にもあり、いずれも楽ではないとも言えそうです。仲介が決まりづらくなった理由について言えば、それぞれとも言えますが、コロナウィルスの影響とも言えそうです。

コロナ禍でも表向きは不動産価格が下がらない、あまり下がっていない流れになっているようですが、不動産の現場にいる私の感覚としては、動くものと動きづらいものに分かれ、動くものに人が集中している印象があります。動くものは相場を維持あるいは価格上昇も起こっているのでしょうが、物件の全部がそうではないでしょう。高い売出価格を見て、「今は高い時期のようだから。高く売れるなら」と希望として高い価格で売りに出す、そういう循環の中で、価格が高めに推移している。理由の一つにはあげられるかもしれません。

昭和の終わりのバブル(平成に入り弾けた)では、大きな範囲において、種類を限定せずに価格が高騰した印象がありましたが、コロナ禍は、表と水面下、あるいは駅近とそれ以外、そして、東京と地方、区分と大型物件、等々、比較における二極化がポイントになっている気がいたします。

 

東京でも空室になると、家賃を下げて入居付けをするという例が増えている気がします。家賃は下がらない、下がっていないという話もあるようですが、事務所だけではなく居住用の物件も、コロナウィルスの影響はあると思います。

それでも、不動産投資は固いところがあると思います。同じようにメリットを感じる方が興味を持たれる分野でしょう。不動産は目に見えます。実物というのはわかりやすいものです。また、不動産は一つ一つが違います。同じような物件でも売主によって価格が異なる、貸主によって家賃が異なるなど、それぞれ個別です。

個別に考えるのが苦痛でない人には、向いているのだと思います。不動産はそれ自体の全体の規則性や傾向もありますが、物件を一つずつ見たり、取引が相対ですので、個別で考えたり対応する場面があります。

大きな取引やまとめての取引(バルク)の場合は、考え方が異なってくるところもあるでしょうが、立地や物件の価値についての判断をスルーするわけにはいかないとすれば、不動産について考えざるを得ない。具体的に考えることが求められる分野だと思います。

 

不動産を対象に、不動産だけではなく関係することを含めて解決の糸口を探し当てたり、深堀したくなる人が就く職業が不動産業なのかもしれない。そういう気がします。全員がそうではないにしても、私の周りの同業者を見れば、そういう感じを持っている方がいます。そして、おそらく、私自身がそうなのでしょう。

 

毎日、救急車が走っています。一時よりは回数が少なくなったように感じますが、サイレンの音を聞くたびに、コロナウィルス感染症の過酷な状況を思います。

不動産の価格の高騰というニュース、一部現実にそれもあるにせよ、半面、企業や個人の厳しい状況があります。

仮に二極化の平均をとって物事を考えるのか、あるいは差をもって考えるのか、人によって考え方も見方も異なるところはあるのでしょうが、不動産についても、楽観的な面ばかりではなく、淘汰の厳しい時代にすでに入っており、その流れは今後も続いていくのではないかと思います。

世の中に流れるニュースよりも、現実や現場で実感するところから未来は起こる、過去を振り返ると、未来というのは私にとってそういうものであった気がいたします。

 

カズシン株式会社

代表取締役 山内和美